ジビエとしても人気の高い鹿肉。日本ではあまり出回っていませんが、ヨーロッパでは高級肉として出回り、家畜として飼われている国もあるそう。
珍しい鹿肉を買ってみた、もしくはいただいたけどどうやって食べたらいい?というあなたの疑問に、週3度ほどの頻度で鹿肉を食べる筆者がお答えします。

なんでそんなに鹿肉ばっかり食べてるの?

移住した先のご近所の猟師さんにおすそ分けしてもらっているよ。
鹿肉を食べることのメリット

鹿肉は栄養が豊富
鹿肉は牛肉と比較して脂質が1/6、カロリーは半分以下ととてもヘルシーなお肉です。
それに加え鉄分含有量は2倍あり、中でもヘム鉄と呼ばれる身体に吸収されやすい鉄分の成分が豊富で、貧血や冷え性を予防する働きがあります。
また、鹿肉に多く含まれる「アセチルカルニチン」はアミノ酸の一種で、脳機能向上やストレス軽減、疲労回復の効果があると報告されています。

血が足りなくなる生理前や生理中に食べると元気になります。
害獣駆除と、その後のこと
日本の野生鳥獣による農作物被害額は約160億円。
その大半がイノシシ、鹿によるものです。
その作物の被害を食い止める目的で行われる捕獲を中心として特にイノシシとシカの捕獲頭数が大幅に増えていますが、その一方食肉として利用されるのはそのうちのわずか1割程度です(平成30年度 農林水産省調査)。
捕獲された有害鳥獣はほとんどが埋設・焼却によって廃棄処理されており、その処理費用もまた農林業者や地方自治体の財政を圧迫する原因になっています。

人間が天敵の動物の住む環境を壊したのが原因なのに、自分勝手だなとも思います…
家畜肉生産による温室効果ガス排出を減らすことができる
地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス。
発電したり、車を運転したりなど工業分野での大量排出はイメージしやすいですが、食生活に関わる温室効果ガスの排出量は、肉類の消費関連が最多だとされています。
豚肉の場合、小売店で並んでいる精肉1キロ当たりの排出量はCO2換算で約7.8キロ、牛肉の生産に関わる温室効果ガス排出量は23.1キロと同じ量の豚肉の4倍ほど。これは、えさの生産や飼育、食肉処理などの過程の排出量を合算したもの。
これらの豚、牛肉の消費をある程度天然の鹿肉に置き換えることで、温室効果ガス排出削減にも繋がります。
料理する前に知っておきたい鹿肉の特徴

鹿肉の調理は、普段食べている豚や牛、鳥と同じような調理方法だと思うように美味しく仕上がらないこともあります。
まずは、調理する前に鹿肉の特徴を知りましょう。
脂の融点が高い
動物の脂は不飽和脂肪酸含量が高いほど、融点が低い傾向があります。
そしてその脂の融点(脂の溶ける温度)が低いほど、いわゆる舌の上でとろけるような〜というような表現が使われる口当たりになります。
鹿肉を身近な肉と比べると、
鶏:30-32℃
豚:33-37℃
馬:30-43℃
牛:32-50℃(和牛は低く、輸入牛は高い)
羊:44-55℃
鹿:55℃
かなり融点が高いのがわかります。融点が体温より高いと、口の中でも脂がとけません。
ジンギスカンをよく食べる道民ならわかりますが、羊の脂もタレに白く固まって浮きますよね。あれは、豚などに比べて脂の融点が高いからです。
鹿肉の脂の部分を食べる際は、焼いて時間がたたない高温のうちに口に入れる焼肉やジンギスカンなどの食べ方だと美味しく食べられます。

脂身が好きな人もいますが、私は大体は取り除いてしまいます
高温での調理は硬くなりやすい
鹿肉は赤身のお肉なので、普段食べ慣れている脂の乗っている牛肉や豚肉と同じような調理方法で食べようとすると「硬い」と感じる方も多いでしょう。
お肉に含まれるタンパク質は、加熱を始め60℃付近までは温度が高くなる程、食べやすい柔らかさに近づいていき、65℃を超えると急激に硬くなってきます。
脂の多いサシの入ったお肉だと火の通り具合が少しいい加減でも、繊維の間に脂があるので柔らかく感じますが、赤身の肉はそうはいきません。
赤身の肉は赤身肉に適した調理方があります。ぜひこの後紹介するレシピを参考にしてください。
筋膜やスジは取り除く

お肉を貰ってきた場合、買ってくるパックされたお肉とは違ってスジや筋膜、脂も付いていることが多いです。
筋膜やスジが付いたままだと、部分的に硬くなる、縮むなどお肉の食感を損なうので、特にステーキやローストなど焼いて食べる場合は取り除きましょう。
煮込む場合はあまり神経質にならなくても大丈夫。
また、上述の通り焼肉やジンギスカンとして食べる以外は脂身も綺麗に取り除くことを個人的にはお勧めします。
お肉がくさい?対処法
本来、新鮮で適切な処理をされた鹿肉はあまり臭くありません。
しかし、血抜きが十分でない肉、鉄砲で撃たれてから走った鹿の肉は臭いがきつくなる傾向にあります。
その場合は、ショウガやネギなど臭みを消すものと一緒に調理したり、塩水漬けもしくは醤油につけて水分と一緒に血を抜いてしまいましょう。
鹿肉レシピ5選
鹿肉のロースト

ローストは我が家では定番の食べ方。最も美味しく食べられる調理法の1つです。
ロースやモモなど大きめのブロック肉が適しています。ソースはお好みで、わさび醤油やハニーマスタードソースも合います。
材料
- 鹿肉ブロック・・・200g~300g
- 塩コショー・・・適量
- オリーブオイル・・・適量
作り方
- 調理前に鹿肉を常温にしておく。鹿肉の脂や筋を取り除く。
- フライパンを熱しオリーブオイルを引き、お肉の表面に焼き目をつける。
- 塩コショーをする。オーブンを170度に熱しておく
- お肉に焼き目がついていたらフライパンから取り出し、お肉をアルミホイルにふんわりと包む。
- 170度のオーブンで10分熱し、オーブンから取り出す
- 余熱で火を通すため常温で30分おく
ほかにも、低温調理調理する方法、湯煎でじっくり火を通す調理法もおすすめです。
鹿肉のステーキ

鹿肉をステーキで食べる場合、高温で一気に中心部まで熱するとお肉が硬くなってしまいます。
焼き加減はミディアムレア~ミディアムくらいが理想。
鹿肉の生食は肝炎のリスクがあるので、生焼けを避けるために焼く前にお肉は常温に戻しておきましょう。
材料
- 鹿肉 100〜200g
- 塩コショー・・・適量
- バジルなどのハーブ・・・適量
- にんにく・・・1片
作り方
- お肉はフォークなどで繊維をきる。
- 調味料をまぶし、1時間ほど常温に戻す。
- フライパンを十分に熱し油をひき、両面を焼く
鹿肉のビール煮込み
鹿肉の煮込みは、旨味がスープに溶け出し味わい深い料理です。
お肉を大きいまま入れれば見た目も華やかなメインディッシュに仕上がります。
ビールをワインに変えても美味しくできます。ぜひ自分の好みを見つけてみてください。
材料
- 鹿肉・・・300gほど
- ビール・・・1/2缶
- 玉ねぎ・・・1つ
- 人参・・・1/2
- りんご・・・1つ
- トマトジュースまたはトマト缶・・・400g
- 醤油・・・適量
- オイスターソース・・・適量
- 塩コショー
作り方
- たまねぎ、人参、りんごは皮をむき一口大に切る。
- 油をひき、鍋で野菜を炒める。
- 鹿肉を好みの大きさに切り、トマトジュース(またはトマト缶)、りんごと一緒に鍋に入れる。
- 3時間ほど煮込む。または圧力鍋で20分、一度かき混ぜさらに20分煮込む。
- 最後に調味料にで味を整える
鹿肉ハンバーグ

鹿肉のミンチが手に入ったなら、ハンバーグがお勧めです。
鹿肉だけでは脂が少ないので、豚や牛のひき肉と合わせると食べやすいです。
お肉の味がしっかりとしたハンバーグになり食べ応えがあります。トマトソースやデミグラスソースなど濃いめのソースに合わせると美味しいです。
材料
- 鹿肉ミンチ・・・150g
- 豚ひき肉(もしくは合挽肉)・・・150g
- 玉ねぎ・・・1/2
- 塩コショー・・・適量
- 卵・・・1個
- パン粉・・・適量
作り方
- 玉ねぎはあらかじめみじん切りし、しんなりするまで炒める。
- 鹿ミンチ、豚ひき肉(または合挽肉)とその他の材料を全て混ぜ合わせ、こね、整形する
- フライパンに油を熱し、両面を焼く
鹿肉の燻製

鹿肉の燻製は、肉の濃い味が引き立ちます。
キャンプなど、アウトドアで呑みながら楽しむ時にもぴったりです。
材料
- 鹿肉・・・200〜300g
- 塩・・・適量
- ハーブ・・・お好みで
作り方
- 鹿肉は脂を取り除き、食材の重さの4%の塩水(ソミュール液)に3日ほどつける。お好みでハーブも加える。
- 水分を拭き取り、網に並べ100度で30分ほど燻製する
鹿肉調理に有ると嬉しい調理器具
圧力鍋

圧力鍋があると、3時間かかる煮込みが30分ほどでホロホロに出来上がります。
時短でできるのはガス代やIHの電気代削減にもなるので、長期的に見てエコです。
我が家の買って良かったものトップ3に入る活躍ぶりです。
カレーや角煮、ビーフシチューなど煮込む料理をする頻度が高いなら持っていて損はないです。
低温調理器

ローストビーフや鶏チャーシューなども作れると人気の低温調理器。
高温調理だと硬くなりやすい鹿肉にぴったりの調理器具です。
フードチョッパー

お肉がたくさんあるという時に、料理の幅を与えてくれるフードチョッパー。
これがあれば、家庭でもお肉をミンチにできます。安売りのお肉を消化する時にも最高です。
鹿肉も使いこなせば色々な料理で楽しめる

鹿肉も、特徴を知ればとても美味しく食べることができます。
鹿肉が手に入る機会がある人は、ぜひ色々な料理に挑戦してみてください。
私は、鹿がお肉になる工程をお手伝いすることがありますが、その度に肉を食べるということ、命をいただくということについて考えます。
工業的に生産されたお肉よりも、自然に近いものを食べるのが、私の今の生活にはあっているような気がします。