#3 やる気と殺気

狩猟日記

友人の結婚式の参列のために東京に行っていた。

久しぶりの東京。

文字通り人の流れに流されて、彷徨った。


街は田舎にはないキラキラであふれていた。

だけど水がまずい、飯がまずい。(結婚式のご馳走はとても美味しかった)

ホテルにいても他人の声や水の音がする。耐え難い。

二泊三日の行程のうち半分過ぎた頃には猛烈に北海道へ帰りたくなっていた。

そもそも12月なのに20℃もある。温暖化にもほどがある、恐ろしい。

なのにウールのコートやダウンを着ている人たち。なんだかもうよくわからない。


そんなフラストレーションを抱えて北海道に帰ってきた頃には、はやくなるべく人の気配を感じず山に入りたい、それが自分のやるべきことだと思っていた。

空港帰りに北海道の誇るご当地回転寿司屋に一人で寄り、そもそも水が違うからシャリがうまい、と幸せを噛み締めた。

帰ってきてすぐに、通販で注文して届いていた部品でスキー用ストックにシューティングレストを取り付ける。

家の中でデモンストレーションを何度もしてみる。完璧だ。これなら鹿を獲れる確率は格段に上がるはず。早く山に行きたい。


そんな気持ちで師匠と2日連続狩猟に出かけた。

やる気を出し過ぎて私の頭から殺気が出てしまったのかもしれない、

1日目は日の出前に数頭、2日目は1頭も撃つチャンスどころか鹿の姿すら見れなかった。

降雪があり鹿の動きが変わったということもあるが、ことごとく予想は外れてしまった。


林道を走ること早4時間。走行距離は100kmを超える。

師「どうする?帰るか? ○○のほう、もう少し見てみるか?」

私「帰ります!」

師「もう嫌になったか?」

私「うーん、嫌にはなってないけど首が疲れた!」

結果、さらにフラストレーションが溜まった。

少し休んで雪が降るのを待った方が良いのかもしれない。


林道の倒木を避けて道を整備して「いいことしたから、いいことあるよ」と帰ってきた、そんな日だった。

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