#4 歩いて山へ

狩猟日記

数日、寒波が来た。只々、雪が降るのを待ち望む。

少し降ったけどまだまだ積雪が足りない、けど夫が休みの日に猟に行きたい、というので前日に一人で下見に行く。


まだ林道に除雪は来ていなかったが、車が走れないほどの積雪ではなく、天気が悪い予報だったのにも関わらずすでに他の狩猟者が車で入った形跡があった。

生きている林道はまだ車で狩猟者が通るので、歩いて上がるならブル道(林道に重機が通れるように道がついている、車で通るのは困難)かな、ということで

初めて入る林に目星をつける。

明日は西風が強い予報だけど、この斜面の向きなら風は避けられるはず。


翌日、起きる予定時刻前から外では風が鳴っていて、目を覚ます。

こんな風では、ダメだろうか。

現地に行って風が強かったら引き返すのを前提に出発。

昨日予想した通り、しっかり風は避けられる。

積雪はまだ15cmくらいだろうか、私はスキーを履いて、夫はスノーシューで山に入る。


先日の状況から比べて、足跡が増えている。寒波で鹿も少し動いたのだろうか。

4,50分歩いたところで、夫が鹿を見つけた。


距離は120mくらい、ちょっと遠いがスコープで捉えることができる。

向こうはこちらに気付いていない。

引き金をひく。スコープの中で狙っていた鹿が驚いて動いた。

ダメだ、銃がぶれてる、外した。


2頭だと思った鹿は4頭の群れだった。一気に走るが、風向きでこちらの音が聞こえないのか、どこから撃たれているのかわからない様子だった。

少し走って、また、止まった。


自分の位置からは木の陰に入ってしまったので、夫に少し歩いて撃てたら撃ってみて、と。

すると夫の動きに気付いた鹿は「ピイッ」と鳴いて、一斉に一目散に斜面を駆け下りていった。もう姿は見えない。


私は久々に銃が撃てた興奮と、こんな道具を持っているのに人間ってまぬけで無力だなあとなんだか笑えてきた。


今まで、当たるときと当たらない時の感覚はしっかりわかっている。

数えきれないほとあった「うまくいかなかったレース」のそれと似ていて、やけに緊張して地に足ついていないような、浮ついた感覚がどこかにある。

そう思ったら、獲れないことよりも自分自身をコントロールできなかったことが悔しい。


少し歩いて、チャンスもなさそうだったので潔く家に帰った。

久しぶりに雪の中を歩いたからひどく体が冷えていて、温泉に向かった。

これはこれで、いい1日だった。

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