レジ袋有料化とズレる論点
2020年7月1日。全国のコンビニをはじめとする小売各店で、プラスチック製レジ袋が生分解性プラスチック製のもの、バイオマス素材の配合率25%以上のものを除くという逃げ道付きで有料化された。
賛否両論あるようだ。多くのメディアが様々な目線から有料化の有効性を論じた。
批判的な意見のだいたいはこれだ。
- レジ袋は海洋プラスチックごみのたった0.3%である。故に問題の根本の解決にはならない
- たった5円では使い続ける人は使い続ける
- そもそもプラスチックは石油の副産物
- 日本のプラごみの再利用率は高い(ほとんどがサーマルリサイクルだ)
確かに、レジ袋有料化だけでは問題の根本解決になっていない。だが、この批判的な意見を鵜呑みにしないでほしい。そもそも、根本の解決とは何なのかを考えたい。
そもそも世界が脱プラスチックに向かっている理由
日本では、仮にスーパーでプラスチック梱包を避けて夕食を作ろうなんてことは極めて困難である。プラスチックを避けて買い物をしようと思うのであればサステナブルを掲げる量り売りの店を探すほかない。(どこにでもあるわけではない。)
それほどプラスチックに生活を助けられているのに、脱プラスチックに向かう理由はそもそも何なのか。
プラスチックで多くの動物を殺している
海では漁網などのプラスチックごみに絡まってカメやイルカ、あざらしなどが死んでしまった例などが多数確認されている。
2018年奈良公園の鹿が原因不明の体調不良で死亡した。胃からは大量のプラスチックごみが見つかった。死因は胃がプラスチックごみで塞がったことが理由の餓死だった。その後の研究では最高で4.3㎏ものプラスチックごみが胃から見つかった例が確認されている。
ここ100年の間に人間が利便性と経済発展のために作り出したプラスチックを、何も知らない動物たちに「食べられないものと判断しろ」だなんて言えるだろうか。
マイクロプラスチックで変わる生態系
海洋プラスチックは劣化し、マイクロプラスチックと呼ばれる小さな粒になる。だが、決して自然界で分解されることはなく残り、その量は増え続けるばかりだ。
魚や動物、サンゴなどマイクロプラスチックを食べてしまっている生き物はかなり多い。
そもそも発がん性や生殖機能の低下などプラスチック自体に毒性がある。
これらは人間以外の生き物にも同様で、動物だけでなく野菜の生育などにも当てはまる。
無意識にマイクロプラスチックを海に流している
今までの話だと、ポイ捨てされているプラスチックがすべて悪さを働いているように思える。だが我々は知らず知らずのうちにマイクロプラスチックを海に流している。
例えば、歯磨き粉や洗顔料などのスクラブ入り商品は、スクラブにマイクロプラスチックを使っていることがある。マスカラなどに入っている繊維にも注意したい。
盲点になりがちなのが洗濯で、合成繊維のポリエステル、アクリル、ナイロンなどを洗うと繊維が摩擦で微量剥がれ、排水されることでマイクロプラスチックを最終的には海へ運んでいる。無意識より怖いものはない。
深刻な貧困地域のプラスチック問題
東南アジアや南アフリカの貧困地域ではそもそもゴミを回収するというシステムがない。店先では個包装のバラ売りの洗剤などが大量に並ぶ。貧困地域では容量の多い洗剤を買うことも困難なのだ。プラスチックごみは家庭で燃やされたりポイ捨てされる。
こういった地域ではプラスチックごみが排水ルートに詰まり洪水を引き起こしたり、感染症を媒介する蚊が卵を産み大量発生している。
「貧困地域の問題はその地域の問題」と思うだろうが、プラスチック梱包の製品を大量生産し売る洗剤メーカーの多くは先進国のものだ。貧困地域を変えるには先進国から変わっていかなくてはいけない。
人間にどれだけの害があるのか、まだ解明されていない点も多い
マイクロプラスチックより細かくなったプラスチックの粒子をナノプラスチックと呼ぶ。すでに空気中にも浮遊しており、雪にも含まれていることが確認されている。
その人体への影響はまだ解明されていない点も多く、人間が利便性の為に作り出したプラスチックが原因で、人間が様々な疾患をおう可能性も十分ある。
本当の意味での解決
日本では「レジ袋有料化」という形で生活に取り入れられた、プラスチック問題への向き合うきっかけ。
きっかけとしては十分だが、行動としてはまだできることはたくさんある。
本当の意味の解決は使い捨てプラスチックや日用品も含め世界的にプラスチックの生産を減らし、使い方を変えること。
消費者側も「不要である」と意思表示することで消費されずに済むプラスチックは多い。できることから気持ちよく取り入れていきたい。
今回読んだ本…プラスチックスープの地球PLASTIC SOUP
写真も多く、ふりがなもふっているので小学生でも読みやすい本。大人でも読み応え十分だ。